新潟連続強姦殺人事件 喜納尚吾とは何者なのか
どうもこんにちは、筑前です。
今回は久々に記事を書きたいと思ったので書かせていただきます。
今回、取り上げる事件は個人的に自分が注目している事件で、2014年に新潟県新発田市で発生した連続強姦''殺人''事件で、2020年に別件で服役中だった喜納尚吾(きな しょうご)被告が逮捕され、2年の歳月を経てついに喜納尚吾被告の裁判が始まりました。全国ニュースではサラッと触れられただけでしたが、新潟県内だとかなり報じられており県内では最注目事案と言えるでしょう。ただ、この事件は非常に複雑な事情が絡みに絡んでいる事件です。一つ一つ紹介していきます。
事件概要
2014年4月7日、新潟県新発田市の竹やぶで22歳の女性の遺体が発見される。この女性は2013年11月22日に「友達の家に行く」と言い残し行方不明になっており、この遺体発見現場は女性の家から北西に約5キロの地点だった。新潟県警は死体遺棄事件として捜査を初め、そしてこの4ヶ月後、別事件で逮捕されていた喜納が殺人容疑で逮捕された。
ただ、この発見された遺体は既に白骨化してしまっていた為に死因の特定が困難で殺意が立証できずに検察は「殺人罪」ではなく「強姦致死罪」での起訴となってしまった。なのでこの記事のタイトルでは「連続強姦殺人」となっていますが、実質的には「半分強姦殺人半分強姦致死事件」です。(強姦致死は強姦によって被害者が死亡してしまった場合に適用される罪です、殺人から強姦致死になってしまったのはいわゆる格落ちと呼ばれます)
そして喜納は新潟地裁にて2014年6月に別の女性拉致未遂で拘留質問を受けている最中、1階の窓の鍵を開け、逃走防止の柵を乗り越え、なんと新潟地裁から脱走するという前代未聞の出来事が発生。(YouTube上で彼が逃げ出した瞬間の映像が残っているが、映画やドラマの1シーンのようにガチで「待てー!」と言ってる」
そして喜納被告は5分後に約350m離れた新聞販売店に居た所を確保されました。
喜納は別の強姦事件や新潟地裁からの脱走は容疑を認めていたものの、当初から強姦致死事件についてのみ容疑を否認していましたが、最終的にアリバイが無かったことや女性の下着に付着していた体液が喜納被告のDNA型と一致していたこと等からから有罪となり、喜納には2015年に無期懲役の判決が言い渡され、2018年に喜納の無期懲役が確定しました。
事件はこれで終わり……ではなかった。
余罪
実は22歳女性の遺体が発見される5ヶ月前の2013年9月、新潟県新発田市のアパートの駐車場で乗用車4台が燃える火事が発生し、その車内から24歳の女性の遺体が発見されていた。
そして22歳女性の遺体が見つかる4日前である4月3日には新潟県新発田市本間新田の川の中で頭部が白骨化している20歳女性の遺体が発見された。
さらに遺体の発見現場近くには女性が所有していた乗用車が木に衝突している状態で発見され、現場近くでは不審な男の目撃情報もあった。この女性は司法解剖されるも、結局死因が特定できず、新潟県警は自殺の可能性があるものの、事件と事故の両面で捜査を始めた。
実はこの2人の変死事件、現場やその周辺から採取されたDNAや残留物が喜納のDNAと一致していた。
しかし、当時、新潟県警はこの事件で喜納を逮捕する事は出来なかった。おそらく確実に有罪にできる程の証拠が集まらなかったのだろう。
そして、そのまま6年が経ち、2020年2月26日。
既に無期懲役が確定し、服役していた喜納が20歳女性の件で殺人容疑で逮捕されたのである。
そして喜納はこの件でも前回と同じく容疑を否認したが、同年に「殺人罪として起訴できる」として殺人罪に加えて、わいせつ略取誘拐の罪でも起訴されました。
今年、裁判が始まる
そもそも、喜納はどういう事件を起こしたとされるのかというと
「喜納被告は2014年1月15日、新発田市内で女性が運転する車に乗り込んで連れ去り、わいせつな行為をした上で窒息死または溺死させた」
とされています。ただ、遺体は発見時、既に遺体が一部白骨化してしまっている上、本人が容疑を否認してしまっている以上、詳しい死因や殺害方法については不明です。
喜納は2020年に起訴されたものの、裁判の日程すら決まらない状況が続いていました。そして迎えた2022年10月17日、ついに喜納の初公判が開かれました。
罪状認否にて喜納は「全く見に覚えがありません」と起訴内容を否認しました。
この裁判で主な争点となるのは
- この女性の死亡が「事件」なのか(事件性)
- 仮に事件だとして、犯人は喜納なのか(犯人性)
という点です。まず1つ目の「事件性」について検察側は以下のように主張しました。
- 女性が発見された川は浅く、大人が溺れる深さではない
- 女性に自殺する動機がない
- 発見当時、不自然に女性の服がめくれており、水の流れなどでめくれる可能性も低い
そして検察側は2つ目の「犯人性」についても以下のように主張しました。
- 女性の乗用車のハンドルから喜納と女性が混合したDNA型が検出される
- 喜納が現場近くでタクシーを利用していた
一方の弁護側は検察側の主張については女性の遺体と車が見つかったのが真実で、全て憶測でしかないと批判。
女性は自殺の可能性があると主張をし、DNA型が検出された事についても個人を特定できない不十分な証拠と批判しました。
喜納の裁判は合計13回が行われる予定で、11月7日に結審する予定です。
喜納の犯歴
7年越しに再び新潟地裁の法廷に立った喜納尚吾、この男は過去にも犯罪を繰り返していた。
喜納は沖縄県石垣島の出身で、高校を中退して経緯は不明だが少年院に入っていたという。
そして、沖縄県内で強姦致傷事件を引き起こし2004年10月から約8年間服役した。しかし2009年に今度は友人宅を放火し懲役3年に処され、またもや服役。そして2012年に出所した後は宮城から新潟へ移り住んだという。
「二重処罰の禁止」
ここで一旦、この事件について語る上で「二重処罰の禁止」について紹介しないといけない。
「二重処罰の禁止」とは「一度その罪で判決が決まれば、その罪では二度と罰を与えることはできない」という原則である。
一体それが今回の事件に何が関係しているのかと思われるかもしれない。だが、簡単に言えばこの喜納という男は下手したら3人も殺してるかもしれないのに立件が遅れたせいで死刑を免れたのかもしれないのだ。
上記に解説した通り、もう判決が出てしまった罪は二度とその罪では罰を与えられないのだ。
つまり、2014年に逮捕された22歳女性の強姦致死事件と2020年に逮捕された20歳女性の殺人事件を併合して「連続強姦殺人事件」として審理は出来ない。
これが最初にワイが「非常に複雑な事情が絡んでいる事件」と言った所以だ。
今、審理をしている真っ最中の20歳女性殺害事件は「ひとつの事件」として審理する事になる。「連続強姦殺人事件」ではないのだ。「単独の事件」扱いだ。
もちろんこれは量刑にも影響を及ぼすのだ。もし22歳女性の強姦致死事件と20歳女性の殺害事件を併合し「連続強姦殺人事件」として審理出来ていたのであれば死刑も考えられたかもしれない。(ただ、片方が「致死」になってしまってるのでどっちにしろ死刑は厳しかったと思うが)
しかし、今回の場合は立件が遅れ「死者1の、強姦殺人事件」として審理されることになり、死刑の求刑すら厳しいかもしれない。
もし喜納がこの事件で有罪となり、無期懲役になった場合、無期懲役で服役していた者にまたもや無期懲役を課す事になるのだ。一体何の意味があるのか。
正義とは一体何なのだろうか?
本来なら死刑になる可能性のある人物が死刑にならない。どう考えても正義に反している。
確かに「二重処罰の禁止」は間違ってる訳では無いと思う。自分が被告の立場に立ってみれば既に刑が確定した事件でまた裁判になるのはおかしな話だ。ただ、これだと余罪があるのにそれをわざと話さず死刑を「回避」する悪どい輩が現れるのだ。
実は過去にも同様のケースがあって、大阪で洋服屋の店主を角材で殴って殺害した強盗殺人事件を起こし服役中だった男がこの約2週間後に大阪で薬剤師を殺害していたとして強盗殺人の容疑で再び逮捕された。これも本当は「連続強盗殺人事件」なのだ。しかし扱いとしては「単独の事件」なので「二重処罰の禁止」に阻まれ、死刑にならなかった。
本来なら死刑と思えるが、この事件では高裁の裁判長は以下のように述べた。
「仮に連続強盗殺人事件として審理されていれば極刑が選択される可能性は否定できない」
感想
話が脱線したので話を戻す。20歳女性の被害者は信号待ちをしていただけなのだ。そんな中、突然訳の分からない男が乗り込んできて無理矢理わいせつな行為をされた上で殺害されたと考えると安全であるはずの車で起きた事件として地域社会には甚大な不安を与えただろうし、あまりに度を逸してる。一人暮らしの女性を襲ったり1人で留守番をしていた女性を襲ったりする事件は何回か見た事があるが「信号待ちをしている車に乗り込み、そのまま車ごと拉致してわいせつ行為に及び殺害し、川に遺棄する」という事件は聞いた事がない。
喜納の求刑はおそらく結審される11月7日になると思われる。
そして確か、この事件では喜納の弁護士が「検察が極めて厳しい刑を求刑する可能性」について仄めかしていたので、もしかすると検察としては死刑求刑で行くつもりだと思われる。
ただ、死刑求刑まで行ったとしても裁判でのこの事件の扱いとしては「単独の事件」なので従来の前例主義に基づき死刑は回避されるだろう。だって''死者1''の事件なのだから。
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